小話 |
「殿下はまだまだ子供ですな」 久しぶりにフィーリアの私室に向かう。扉を開けて、飛び出るように抱きついてきたフィーリアに笑みを零しながら、ついでにしっかり抱き返しつつもフォルカーは開口一番そう告げた。 フィーリアは口を尖らせ、それでも久しぶりに会えて嬉しかったのか頬を紅潮させたままフォルカーの発言を否定した。 「もう、フォルカーはそうやってすぐにわたしを子供扱いするんだから。もう子供じゃないわ。15だもの」 15は子供だ。と、口に出さぬままフォルカーは否定する。こと娘のいるフォルカーとしては、そしてある種フィーリアを自分の娘扱いしている身としては15歳の少女は子供としか映らないわけなのだが。 「これは失敬、そうでしたな。既に15になられた殿下を子供扱いするとは、私もなかなか命知らずでした」 「…いいわよ」 「はて?」 「フォルカーなら、子供扱い、しても」 「と、言いますと…?」 フィーリアは頬を真っ赤にすると呟いた。元々透き通るように白い肌を持つ彼女が赤面すると、それは林檎のようになる。 「フォルカーだけが、わたしを子供扱いしていいの」 「これは、これは…」 フォルカーは苦笑した。結局、周りの誰もが――エクレール以外の誰もが彼女を既に大人扱いする中で、彼女が自然と求めるようになったのは「自分を年相応として扱ってくれる大人」だったのだろう。それに、自分は適任だったわけだ。王女であっても、自身がそれを望んでも、時に15歳らしく振舞いたい時もある。父親さえも失った彼女には、もはやフォルカーのような存在でしか父の影を感じられないのだ。 それなら、仮初であっても父親であろう。殿下を包む毛布でありたい。苦しい時にはいつでも逃げ込める楽園でありたい。そう心から願うと、フォルカーはフィーリアの肩を抱くのだった。 おしまい |
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