明日は運命の


−−−明日は、運命の日。



明日のことを色々と考えていると、胸がドキドキしてしまって何も手につかない。
カーテンを少し開けた窓辺で本を読んでいても、文字だけが頭の中を通り過ぎてゆく。
「だめだわ、何も考えられない。少し早いけど、今日はもう休もうかな・・・」

私、アンジェリークにとって、明日は今までで一番特別な日だった。
それは、明日ずっと好きだった人に告白しようって一大決心をしたから。
お相手は・・・地の守護聖ルヴァ様。
女王候補として聖地に呼ばれ、女王試験が始まってからずいぶん経つ。
何でもできちゃうライバルのロザリアとは違って、私は大陸の育成だけで精一杯・・・。
毎日が勉強の連続だった。
その中で、ルヴァ様に出会ったの・・・。
ルヴァ様はいつも優しくしてくださって、育成に慣れていない私にも、一つ一つ丁寧に教えてくださった。
休日には私の知らない本のことをたくさんお話してくださって、
ルヴァ様と一緒にいると本当に楽しかった。


そんなルヴァ様に、特別な想いを抱くようになったのはいつからだろう。

ルヴァ様にふさわしい女性になりたくて、本もたくさん読むように努力した。
だけど、理想の女性像には全然近づけなくて。



そんな時、いつものように育成のお願いをしようとルヴァ様の執務室を訪ねていくと、
ルヴァ様がロザリアと楽しそうにお話しているのを見てしまい・・・
一瞬で、目の前が真っ暗になった。

それからというもの、楽しそうなルヴァ様の顔が頭を離れなくて、
育成も手につかなくなってしまった。
やっぱり、ロザリアみたいな女の子じゃないと、ルヴァ様は振り向いてくださらないのかも。
ううん、もしかしたらルヴァ様はもうロザリアのことを・・・
なんて、暗い方向にばかり考えてしまう。
だけど、1人で考えてばかりなんて私には似合わない。
だめかもしれないけど、でもせめてルヴァ様にこの想いを伝えておかなくちゃ!
そう決意した私は、ルヴァ様と次の日の曜日に森の湖でお会いする約束をした・・・。



読みかけの本を閉じて、ちょうどベッドに向かおうとしていたところで、
誰かが私の部屋のドアをノックした。
「誰かしら?こんな夜遅くに・・・」なんて不思議に思っていると、


「あー、アンジェリーク、私です。もうお休みですかー?」


「その声は・・・ル、ルヴァ様!?」
予想もしていなかっただけに、ビックリして声が裏返ってしまった。
「あーよかった。まだ起きていらしたのですねー。
こんな遅い時間に突然申し訳ないのですが、
もしよろしかったら今から森の湖にご一緒してもらえませんかー?」
「はっ、はい!ご一緒させてください!!」
いつもの制服に着替えて、私は外で待つルヴァ様のもとへ急いだ。



久しぶりにルヴァ様とお出かけできることが、夢みたいにうれしかった。
告白しようと決めてからは、ずっとお会いしていなかったから。
夜空の下、ルヴァ様と二人で歩いていると、夜の森の涼やかな風が頬を撫でる。
さっきまで明日のことでいっぱいだったのが嘘みたいに、心の中まで澄んでいくみたい。


「さぁ、着きましたよー、アンジェリーク」
「・・・・・・うわぁ、とってもキレイ!水面に星がうつって、なんだか幻想的ですね」
「喜んでもらえてうれしいですよー。私もお誘いした甲斐がありますねぇ」
森の湖には何度か来たことがあったけど、夜は初めてだった。
満天の星空と、月の光にキラキラ光る水の流れを見ていると、なんとなくいつも以上にはしゃいでしまう。
「この間、私も初めて夜に来てみたのですが、
こんなにすばらしい景色を独り占めしてしまうのはもったいなくて・・・
誰かにお見せしたい、そう考えていたらなぜかあなたの顔が浮かんだのですよー。
こうしてあなたの笑顔が見られてとてもうれしいですねー」

突然そんなことを言われて、ドキッとする。
ど、どうしよう!そんなこと言われたら私・・・
今ここでこの想いを告げてしまおうか。
なぜかこの時を逃したら、一生告白できないような気がした。
・・・やっぱり私は悩むより行動!思いきって口を開く。
「あの、ルヴァ様!わ、私・・・」



「・・・少し聞いてもらえませんか、アンジェリーク・・・」

いつにも増して真剣な表情で話しかけてくるルヴァ様に、
今まさに言おうとしていた言葉を飲み込んでしまった。
「あの星空を見てください。この宇宙には数多くの星々があるんですよねー。
この聖地のある主星も、その一つであるわけなのですが・・・
これだけたくさんの星々の中に、数え切れないくらいの人々が住んでいるんですよねー
様々な人生があって、その一人一人が違う考え方をもって生きているのでしょう。
・・・えーと、そのー、何が言いたいのかというとですねー・・・」

ルヴァ様はまっすぐに私の目を見たあと、優しく微笑む。


「私はこんなにも広い宇宙の中で、たった一人のあなたという存在に出会えたことに、
本当に感謝しているのですよー」


・・・ルヴァ様ってば、反則。

そんなことを思いつつ、でもルヴァ様の言葉がうれしくて、顔が熱くなり下を向いてしまう。

「ふふっ、やっぱりアンジェリークは可愛いですねー」
「・・・もうっ!私をからかったんですか?」
「もちろん違いますよー!なんだかあなたらしい反応がとても可愛らしくてですねー。
今のは私の嘘偽りのない素直な気持ちですから、安心してくださいねー」
「・・・ルヴァ様・・・」

それってもしかして、ルヴァ様も私のことを・・・?


「あなたはさっき、私に告白しようとしてくださったんですよねー?」
「えっ?ど、どうしてそれを・・・」
言ってから、しまった!と思ったけど、もう遅くて。
「いえ、もしそうだったらいいなぁ、なんて思ってたんですよー。
まさか本当だったなんて・・・いやぁ、何でも言ってみるものですねぇ」

・・・完全に、私の墓穴だった。

「もしかして、明日ここで言うつもりだったのですかー?」
「・・・・・・はい、そうです・・・」
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。
「それでは・・・明日は私から告白させてくださいね。
私は、ずっと前からあなただけを見つめてきたのですから」

「それって・・・」


「あなたが女王候補として初めて謁見の間に入ってきたとき・・・
あの瞬間から私の想いは始まっていたんですよー。
緊張しながらも、女王陛下の質問に答える凛とした声と横顔・・・。
あなたの姿が、今でも目に焼きついているんです」




その後、ルヴァ様は私を部屋まで送ってくださった。
ずっと前から、ルヴァ様に想われていたなんて・・・。
いろんなことが一気に押し寄せてきていて、なんだかちょっと信じられない。
・・・実は、全部私の夢だったりして・・・?
右のほっぺたを思いっきりつねってみたけど、やっぱり痛い。

「夢じゃないんだ・・・」

「幸せすぎて怖くなる」って、こんな気持ちなのかな。
今日は私、うれしすぎて眠れないかも。
そして、お別れするときのルヴァ様の笑顔と最後の言葉を思い出して、
また一人で赤くなってしまう。



「では、今日はゆっくり休んで、また明日お会いしましょうねー。

私の・・・アンジェ。」





−−−明日は、運命の日。
そう、2人の運命が始まる日。


■せつこさんのサイト「Rain Grass
せつこさんのサイトでキリバンを踏んでルヴァリモを頂きましたv
あー幸せ。
ラストの台詞が!! 私の、って。素敵。
せつこさんの創作は読む度キャラの再現度が高いなと思います。
せつこさんの甘い創作はアンジェにぴったりで好き。です。
これからもよろしくですよーせつこさん!
甘甘なルヴァリモをどうもありがとうございましたーvvv

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