「ニャ〜ン」
「・・・それで、さ・・・」 「なんだジェイド、話なら後にしてくれ」 「あなたがこのゲームから降りるというなら、私は止めはしませんよ」 「ライバルが減るのなら、喜んで手助けさせていただくけど」 「ふむ・・・ではこのカードを捨てることにしよう」
「う〜ん、どう話せば良いのかな・・・」
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話は、1時間ほどさかのぼる。
「こんにちは、失礼させてもらうよ」
よく晴れた昼下がり、陽だまり邸の扉を叩いたのは、 ウォードン・タイムズの記者であるベルナールだった。
「おや・・・珍しいね、この4人が揃っているなんて」 「今、俺が新作のケーキを焼いたところなんだ。 アンジェリークに食べてもらう前に、皆の感想を聞きたくてね」 「ちょうどティータイムでしたので、全員このサルーンに集まっていたのですよ」 「アーティファクトの研究中だったのに・・・無理矢理連れて来られただけだ」 「・・・俺は、槍の稽古の息抜きに」
「ならちょうどいい!君たちオーブハンターへ招待状だよ」
そう言ってベルナールが取り出したのは、小さな封筒。 宛名は『オーブハンターの皆様へ』とある。
「差出人は・・・『ウォードン・タイムズ編集長』?」 「そう。覚えているかい? 先日の首都ウォードンでのタナトス出現に、 颯爽と現れ、タナトスを退けた勇敢なオーブハンター達!」
数日前のウォードン・タイムズの一面を華々しく飾った記事。
『アルカディアの救世主、オーブハンター その奇跡がウォードンの市民を守る!』
アンジェリーク達のおかげで市民には怪我一つなく、幸い大事には至らなかった。 このアルカディアでも多くの人々が暮らす首都で、 負傷者を出さなかったのは、まさに奇跡といっていい。
「勿論、覚えていますよ」 「みんなの笑顔を守ることができて、本当に良かった」 「その活躍に、ウォードン市長が感謝状を授与したいという話になってね。 取材も兼ねて、是非一度ウォードンへと足を運んで欲しいんだ」 「我々は当然のことをしたまで。表彰を受けることなど・・・」 「まぁいいんじゃないか?ここは素直にもらっておこうぜ」 「そうですね、今回のことが記事になれば、 オーブハンターの活動を知ってくださる方も更に増えるでしょう」
「そうと決まったら、さっそく彼女を誘いに・・・」
すると突然、レインが話を遮るように立ち上がった。
「・・・・・・ちょっと待った!」
「どうしたんだいレイン?何か問題でも・・・」 「なぁ・・・別にオレ達全員で行く必要はないんじゃないか? そもそも、この陽だまり邸を留守にするのはどうかと思うが」 「おや、たまには君も正しいことを言えるのですね」 「『たまに』は余計だ!」 「それもそうだな。何か火急の事態があっては・・・ 誰かが彼女に随行し、あとは陽だまり邸に残るのが適切だろう」
「彼女を側でお守りするのが、騎士としての務めだ」 「それでは、この私が不逞の輩から彼女をお守りするべきですね」 「・・・何が言いたいんだ、ニクス?」 「俺は、彼女の行くところならどこへだって行くよ」
4人の間には激しく火花が飛び散っている・・・かのようだった。
「ちょっと・・・いいかい?」
「なんだよベルナール?」 「忘れてないかな、僕は新聞社の人間だ。 僕と彼女が一緒に行けば、陽だまり邸を空けなくて済むし、 編集長とも話しやすい。万事解決だと思わないかい?」 「おや、あなたに彼女の騎士(ナイト)が務まると?」 「・・・チッ、抜け駆けする気かよ・・・」 「我が槍にかけて、彼女の側からは離れられん」 「彼女の笑顔を守るのが、俺の役目だからさ」
やはり、お互いを牽制し合い、結論は出そうになく・・・
「埒が明きませんね・・・ここは、ポーカーで勝負を決めるのはどうでしょう?」 「それがいいだろう」 「運を天に任せるわけか。それなら問題ないね」 「よし、恨みっこなしだぜ!」 「それじゃあ、俺がトランプを持ってくるよ」
それから、かれこれ1時間。 何故か、ポーカーの勝負はつかぬまま・・・
―――今に至る。
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「その・・・彼女のことだからさ・・・ やっぱり『全員で行こう』って言うんじゃないかな・・・?」
「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」
・・・重い、重い沈黙。 その中で最初に口を開いたのはレインだった。
「っは・・・ハハハ!!それもそうだな!」 「・・・レイン君、手持ちのカードをばら撒くのは止めていただけませんか・・・」 「確かに、ジェイドの言う通りだ」 「それも彼女らしさ、と言うべきかな?」
「それじゃあ行こうぜ!俺達全員で、ウォードンへ!!」
「・・・で、何であれだけ粘ってポーカーの勝負がつかなかったんだ?」 「まさか・・・エルヴィン、君が何か・・・?」 「確かに、不思議な猫ではあるが」 「いくらなんでもそれは・・・エルヴィンって普通の猫なんだろう?」 「そんなことないよね、エルヴィン?」
「ニャニャ〜ン!」
おしまい
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