アートレイデ兄妹


夕食後の、穏やかな時間。
ユウリィが食器を洗う音と共に、かすかな鼻歌が聞こえてくる。
いつもなら、その背中を幸せそうに見つめるクルースニク。

しかし、今日の彼の顔は、違っていた。


「ユウリィ」
「何ですか、兄さん」

突然の呼びかけに、
ユウリィは振り向かずにそのまま返事をする。

「俺は・・・この家を出る」
「え、ッ・・・」

ユウリィの持っていた皿の割れる音が響く。
それでも構わずクルースニクは続けた。

「もう二人では暮らせない。明日にでも出て行くことに決めたんだ」
「どうし、て・・・どうしてですか兄さんッ!
 せめて理由を教えてください。
 こんな突然に・・・私、納得できません!!」

ジャリ。
ユウリィの足元から、割れた破片を踏む音がする。

「来るな!」
「ッ!?」
「来ないでくれ、ユウリィ・・・」

兄の祈るような言葉は、消え入りそうなほど小さかった。



『年頃の兄妹が、一つ屋根の下で暮らしている』


その事実だけで、
妹は街の人間からどれほど奇異の目に晒されていることだろう。
自分だけならば、何を言われようが構わない。
しかしユウリィは。この大切な妹だけは―――
クルースニクにとって、苦渋の決断だった。



「俺達が一緒に暮らすことで、
 お前は、嫌でも周囲の目を意識させられることになる」
「そんなこと、兄さんと暮らすと決めた時からわかっていたことです」
「だがここには・・・お前の居場所があるだろう。
 皆に慕われる、ユウリィ・アートレイデ個人としての居場所が。
 それを俺という存在が壊してしまうなら、いっそ・・・」


「そんなもの、要りません」


そしてまた一歩、クルースニクに歩み寄る。

「来るなと言ったはずだ!」
「だって、私は」

今度は制止など聞かず、割れた皿の破片を踏み越え、
座る兄の前に膝をつくユウリィ。
そのまま彼の瞳を真っ直ぐ見据え、手を取った。


「世界中の何より、誰よりも・・・兄さんを選びますから」


■せつこさんのサイト「Rain Grass
あああああああアートレイデ兄妹!!!!(うるさい)
WA4をプレイされたせつこさんが萌えを私にぶつけてくれました。ごちそうです。
元々は彼女がブログで公開していたものだったのですが、無理を言っていただいてきました。
だって、ネオロマオンリーサイトでWA創作書かれても楽しいの私だけで、それってすごく勿体無いことじゃないですか。
エンディング後だ…何事もなく同居設定だ…。そして思い詰める兄と一心にけなげに兄を想う妹だ…。
もう何もかもが萌えポイントで言葉に詰まります。
このあとはユウリィが兄をぎゅっと抱き締めればいいと思います。そして「当ててんのよ」になって兄が狼狽すればいいと思います。
妹にとっては兄の傍にいるのが一番で、それ以外は全部どうでもいいってのが泣かせます。兄一直線で、兄愛されてるじゃないか…。
せつこさん、感動と萌えをありがとうございます! ごちそうさまでした!

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