世界で一番温かな手 |
「ほら兄さん、早く早く!!」 家の外は、一面の銀世界。 まっさらな雪の上に、二つの足跡が重なるようにして増えていく。 昨夜から降り積もった雪で、 家の屋根も、周囲の木々も、山々も白く染め上げられている。 見慣れぬ雪を前にはしゃぐユウリィは、 朝食の準備も後回しにして、兄を外へと連れ出した。 「やけに冷えると思ったら・・・ こんなに積もるのって、初めてじゃないですか?」 「・・・・・・」 「ほら、こんなにいっぱい!これなら雪だるまもたくさん作れそうですね」 「・・・・・・」 「やっぱり、かまくらにしようかな。それに雪合戦も!」 「・・・兄さん、どうしたんですか?」 先程から、クルースニクはただ一点を見つめたまま、 ぼんやりと立ち尽くしていた。 いつもなら聞き逃すはずのないユウリィの言葉すら、 今の彼の耳に届いていないらしい。 「兄さーん!まだ寝ぼけてるんですか?」 反応のない兄に頬を膨らませたユウリィは、これが最終手段とばかりに、 足元の雪を両手で固めて、小さな雪玉を作り上げた。 「こうなったら・・・それっ!!」 「ッ!?」 軽い衝撃がクルースニクを襲った。 そして、じわりとしみてくる冷たさ。 「ちょっと、兄さん・・・どうして」 驚くユウリィの声に、 クルースニクはようやく我に返る。 ・・・言える訳がない。 『雪と戯れるユウリィに、つい見惚れていた』なんて――― クルースニクは、そのまま表情一つ変えずに雪を払うと、 まっすぐ妹の元に近づいていった。 「ご、ごめんなさい。 その・・・冗談のつもりだったんです」 謝罪の言葉にさえ、返事もしない。 どうしよう、兄を怒らせてしまった・・・ その罪悪感に身を小さくするユウリィ。 しかし予想に反して、兄の声はとても優しいものだった。 「こんなに冷たい手をして・・・寒いだろう?」 「え、あ、あの・・・」 てっきり怒られると覚悟していたユウリィは、 クルースニクの言葉に拍子抜けしてしまう。 それどころか、急に兄に手を握られて・・・鼓動が速くなった。 「・・・兄さん、怒らないんですか?」 「怒る?何を・・・」 クルースニクは少し膝をかがめると、 ユウリィと目線を合わせた。 「家へ戻ろう、ユウリィ。 朝食で身体を暖めたほうがいい・・・風邪をひくぞ?」 今度はクルースニクがユウリィの手を引いて行く。 兄の手に導かれ、その大きな背中を見ていると、 こんなにも安心できるのは何故だろう。 「・・・あの、兄さん」 兄さんの温かな手が、世界で一番大好きです。 おしまい |
■せつこさんのサイト「Rain Grass」 御誕生日プレゼントにいただきました。以下添えられたメッセージも一緒に。 〜しんあいなるくるみさまへ〜 お誕生日、おめでとうございます!! すみません、懲りずに今年も書いてしまいました・・・。 しかも、きちんと最初から最後まで書き上げたのは初となる兄妹創作。 なんとなく二人には雪が似合うような・・・という妄想から、 いつの間にやらここまで来てしまいました(笑) 何分兄妹スキー歴の浅いこの私の書いたものですので、 本家(本家って・・・)の方に失礼がないか、心配でございます・・・! 前回と同じくお誕生日プレゼントですので、 サイトや今後のネタとして、ご自由にお使いいただければ嬉しいです♪ 以上、お誕生日創作リターンズでした! わーん! 嬉しい! オフ友であるせつこさんからこれが届いた時の私の喜びはちょっと言葉には出来ないわけです。 そりゃあ読んでて「ほぎゃあぁああああ」とか言いますよ。なんか生まれるってもんです。 どこの世界に実の兄に手を握られてドキドキしちゃう妹がいるんだあああ! ここにいたああああ! どこの世界に実の妹に見惚れる兄がいるんだああ! ここにいたわあああ! もう、早く結婚して下さい。べたつきやがって、本当に(喜)。 ED後は二人で新しい世界を作っていくのだなあ、雪の上を二人で歩いていくという行為はそれを意味しているのかもしれません。 クルユリ布教して良かった…本当に良かった…。 せつこさん、本当にありがとうございました♪ |
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