ンジェリーク・メル編


 メルの大好きなアンジェリークは、すごく乙女チックな性格なんだ。占いとか、おまじないとか、すごく興味があるんだって。だからメルのところに来ては占いをせがむんだよ。大事なハートなのにそんな事ばっかりに使っていいのかな? そういうアンジェリークの事、メルはやっぱり大好きなんだけどね。
 …でも。最近は違うよね。メルの所に来る目的が。
 試験が始まったばっかりの頃は、占いの結果を難しい顔しながら見たあとアルフォンシアとのおまじないするっていうコースだけだったのに、この頃は占いの結果を見る度に顔を輝かせて「メルさんもっと」って、言うよね。さっきだって、メルのところに駆け込んできて言ったよね。

「メルさん、おまじないをお願いします。ランディ様と私で」

 あんなにキラキラした瞳のあなたを、メルはこれまで見た事が無いよ。
 この前はオスカー様とだったよね。そのまた前はゼフェル様だったっけ。
 それでその3人と今はすごく仲がいいんだよね。試験なんてそっちのけで森の湖に通ってばっかりですごく楽しそうにお話ししてるんだよね。メル知ってるよだっていつでもアンジェリークの事水晶球で見てるから。
 ああいうのデートっていうんだよね。メル、前にサラお姉ちゃんに教えてもらったよ。想い合う男の人と女の人が会う事なんだって。だけど…アンジェリークはオスカー様ともゼフェル様ともランディ様ともそれぞれ森の湖に通ってるよね。どれがあなたの本当なの?
 ねえアンジェリーク、たくさんの男の人たちから想われるのは楽しい? 思わせぶりな事言ってみんなを…メルを困らせるのが楽しいの?
 メルだって…。メルだって、こんなに、こんなに、こんなに、こんなに大好きなのに、ど う し て な の か な 
 どうして、メルが目の前にいるのに、アンジェリークはメル以外の人とおまじないを平気でするのかな。メルの気持ち知ってるくせに、どうしてアンジェリークはメルの目の前でメルを傷付ける事ばかりするのかな。メルだって大好きなんだよ。なのにどうしてオスカー様とデートする時そんな顔するの? どうしてゼフェル様に対してそんな目をするの? 誰の事も本気じゃないくせに。ちやほやされたいだけのくせに。
 ひどいよ、アンジェリーク。熱に浮かされてるのはあなただけじゃない、誰もあなたの事なんて本当は見てない、…あなたを幸せに出来るのは、あなたの全部を知ってて全部を見てきたメルだけなのに。
 アンジェリーク。このままその人たちと一緒にいてもあなたは幸せにはなれないよ。どうやったらそれを分かってくれるのかな。

 …そっか。
 おまじないしたって、効かなきゃいいんだ、そうだよね。

 メルはどうして今まで気が付かなかったのかな。こんなに簡単な事なのに。

***

 アンジェリークはあれから1ヶ月くらい姿を現さなかった。当然だと思うな。あの事件の所為で女王試験の1ヶ月の中止と外出禁止令が言い渡されていたから。256代女王陛下のお達しだからさすがのアンジェリークも逆らおうとはしなかったよね。
 確か今日が試験再開日だったっけ。

「あ、アンジェリーク! 来てくれたんだね、嬉しいよ」
「メル、さん…」
 アンジェリークは暗い顔をしているね。
「今日はどうするのかな? 占いかな? それとも、おまじないかな?」
「…。占いだけで、いいです」
「どうして? だって、あんなに毎回おまじないばっかりだったのに。急にどうしちゃったの?」

「私の所為だもの…!」

 憑かれたように突然その場に崩れ落ちるアンジェリーク。ぼろぼろ泣いているね。

「私がおまじないしたから! あの連続殺人が起こったの!」
「そんなの、アンジェリークの気の迷いだよ」
「気の迷いなんかじゃない! 私がおまじないをした通りの人が殺されているんだもの! もう怖くて、おまじないなんか出来ない!!」
「アンジェリーク…」
 可哀想に。あの殺人事件が起こり始めてから、ずっとアンジェリークは悩んで苦しんで来たんだね。試験にも、きっと集中出来てないよね。
 しかも、犯人はまだ捕まってないんだから。苦しんでいるだけじゃなくて、怖さもあるよね。
「こんな事になるのなら、おまじないなんかしなきゃ良かった…!」
 そうだね。
「私の所為、私の所為、全部私の所為なの!!」
 うわあああああって声を上げて泣いているアンジェリークを、メルは抱き締めてあげる事にするね。だってメルは優しいから。あの事件が起きたのは確かにアンジェリークの所為だもの。ちゃんと反省しているから、メルは許すよ。
「メルさん、助けて、助けて…!」
「大丈夫。メルがきっと守るから。アンジェリークは心配しないで。メルが何に代えてもきっとあなたを守ってみせるから」

 ああ、良かった。アンジェリークはやっと分かってくれた。メルはすごく嬉しいよ。
 これで二度とアンジェリークはおまじないをしないよね。


おしまい


■あとがき
ここまでお付き合いいただいてありがとうございました。
メルメルが覚醒したらこんな感じになると思います。
Sp2でも実際男との縁結びばっかりやらされてたらどんどん機嫌悪くなっていきますもんね。
→ネオロマ小説へ
→home